皮膚の科学
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症例
劇症型抗リン脂質抗体症候群の1例
南 志乃藤本 徳毅高山 悟山下 真未山本 文平中西 健史田中 俊宏
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2015 年 14 巻 2 号 p. 73-78

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抄録

70歳代,女性。2014年2月より左足関節部に皮膚潰瘍が出現し,前医で血管炎を疑われプレドニゾロン 10mg/日を投与されたが,皮膚潰瘍の拡大が続くため4月に当院を受診した。初診時の血液検査で抗リン脂質抗体を認め,潰瘍周囲からの皮膚生検では真皮浅層から深層にかけて血栓像がみられた。5月の受診時に血小板減少,急性腎不全および神経学的異常を認めたため精査目的にて入院となった。尿路感染症も認めたため,抗菌剤投与による治療を開始したが,腎機能障害と炎症反応は数日で急速に進行した。腹部 CT にて多発微小血栓による腎炎,頭部 MRI で新旧混在する多発脳梗塞を認めた。臨床経過と検査結果より本症例を劇症型抗リン脂質抗体症候群と診断し治療を開始した。ワルファリンカリウムと高用量ステロイド剤の全身投与を開始したところ,炎症反応は比較的速やかに消退し,腎機能障害も改善した。皮膚潰瘍は外科的治療を要せずに縮小した。劇症型抗リン脂質抗体症候群は急速に進行し致死的になり得るため,本疾患を疑った場合は速やかに治療を開始しなければならない。(皮膚の科学,14: 73-78, 2015)

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© 2015 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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