2015 年 14 巻 3 号 p. 115-118
60歳代,男性。膵癌術後の再発に対して TS-1®(テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤)の内服を開始された。内服開始約6ヶ月後にテガフールの総量 13.4g の時点で,顔面に暗紫色紅斑が出現した。頬部より行った生検の病理組織像では液状変性と表皮の個細胞壊死を認めた。蛍光抗体直接法では表皮真皮境界部に IgG,C1q の沈着がみられた。抗核抗体,抗 ds-DNA 抗体,抗 SS-A/Ro 抗体は陰性であった。TS-1® 内服休薬中に皮疹は軽快した。臨床経過と病理組織学的所見より,TS-1®による DLE 型薬疹と診断した。原疾患に対する TS-1® 内服は継続したが,遮光およびステロイド外用治療で皮疹は消退した。薬疹に対しては投薬を中止することが一般的であるが,TS-1® の薬疹においては直ちに内服を中止するのではなく,自験例のように遮光とステロイド剤の外用にて経過観察することも選択肢の一つとなりえると考えた。(皮膚の科学,14: 115-118, 2015)