皮膚の科学
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研究
福井市周辺のネコおよびイヌにおける皮膚糸状菌保有率の調査
山田 茂夫安澤 数史望月 隆
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2015 年 14 巻 4 号 p. 166-170

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抄録

 ネコおよびイヌの皮膚糸状菌保有率を調査する目的で,皮膚症状のない(以下,無症状)ネコおよびイヌの体表から皮膚糸状菌の分離を試みた。2012年11月13日から2014年12月1日の間に,福井市の1動物病院(山田動物病院)に来院した無症状のネコ296頭,イヌ170頭,およびこの調査期間中に福井健康福祉センターに収容されていた無症状のネコ46頭,イヌ5頭の体表を擦過し,真菌培養を行った。動物病院における真菌保有率はネコ:0.34%(1/296),イヌ:0%(0/170),福井健康福祉センターではネコ:0%(0/46),イヌ:0%(0/5)であった。分離された1株は Microsporum(M.)canis であった。この期間中,動物病院における皮膚糸状菌症例はネコが5頭,イヌが2頭,原因菌はすべて M. canis であり,いずれもネコを多頭飼育している寺院あるいはペットショップ由来と推察された。福井市周辺における無症状動物の皮膚糸状菌保有率は極めて低い一方,M. canis 感染症発症例は多頭飼育環境にある動物群に集積することが示唆された。この調査では合わせて,検体採取法として cotton swab sampling method(綿棒法)と滅菌歯ブラシによる擦過法(歯ブラシ法)を比較したが,綿棒法と歯ブラシ法で培養コロニー数および分離菌種数に差はなく,より簡便な綿棒法の有用性が示された。(皮膚の科学,14: 166-170, 2015)

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© 2015 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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