2016 年 15 巻 2 号 p. 57-62
30歳代,男性。2009年3月上旬より特に誘因なく両下腿に紅斑が出現し,徐々に上肢にも拡大し発熱を伴うようになったため前医を受診した。セファゾリンの投与を受けたが軽快せず,D-dimmer 上昇,血小板低下を認め,原因不明の播種性血管内凝固と診断された。メシル酸ナファモスタットを投与され凝固異常は改善したが,発熱が持続しイミペネムの投与を開始されたが無効であった。このためステロイド内服やステロイドパルス療法も行われたが,発熱が持続するため当院転院となった。受診時,患者は Yamaguchi らの基準のリンパ節腫大以外のすべての項目を満たし,検査結果と合わせて感染症,悪性腫瘍,膠原病を除外し,成人発症 Still 病と診断した。ステロイドの単独治療,ステロイドパルス療法,メトトレキサート,シクロスポリンの併用,二重濾過血漿交換,コルヒチン内服のいずれにも著明な反応を示さず,軽快と増悪を繰り返した。治療抵抗性の成人発症 Still 病であり,IL-6 の高値を認めたため Tocilizumab の適応と判断し,Tocilizumab とステロイド内服の併用療法を開始したが病勢は完全には治まらず,最終的に Tocilizumab とメトトレキサート,ステロイド内服の併用により長期の寛解を得ることができた。Tocilizumab の難治性成人発症 Still 病に対する有効性については,今後も本例のような症例の積み重ねが必要と思われる。(皮膚の科学,15: 57-62, 2016)