2016 年 15 巻 6 号 p. 481-485
60歳代,女性。初診1週間前より発熱,咽頭痛があり,解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン,ロキソプロフェンナトリウム水和物),抗菌薬(セフジトレンピボキシル)が処方されたが,同剤内服開始後より体幹部に皮疹が出現し当科を受診した。初診時,顔面,体幹に紅斑,口腔粘膜にびらんを伴っていた。腹部の紅斑は病理組織学的に表皮基底層の空胞変性,個細胞壊死の像を呈していたことから,本症例を Stevens-Johnson 症候群(SJS)と診断した。ステロイド投与開始翌日より血清ヘモグロビン値が急速に低下し,内視鏡検査を施行したところ,胃,十二指腸に多発性潰瘍が確認された。SJS で消化管出血をきたす症例が稀に報告されており,消化管粘膜障害が疑われる場合は粘膜の炎症所見や潰瘍の有無を調べる必要があると考えた。(皮膚の科学,15: 481-485, 2016)