皮膚の科学
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症例
壊死性軟部組織感染症の2例
笹橋 真紀子山下 彩渋谷 真美松井 美萌清水 和輝
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2017 年 16 巻 5 号 p. 306-309

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抄録

症例1:30歳代,男性。発熱,右手背から前腕の腫脹,疼痛を主訴に当院時間外の外来を受診した。蜂窩織炎と診断され,抗生剤の点滴,内服処方にて帰宅した。翌日当科外来受診時,発赤を伴う高度な腫脹,疼痛,水疱を認めた。苦悶状の顔貌で顔面蒼白,冷汗をともなっており,重篤な症状と考え,ただちに ICU 入室となった。qSOFA 2点,白血球 11,200/μl,CRP 30.11mg/dl,LINEC スコア6点。右手背の切開処置にて,多量の排液を認めた。症例2:60歳代,女性。左下腿の発赤,腫脹を主訴に当科夜診を受診した。蜂窩織炎と診断され,内服抗生剤の処方にて帰宅した。2日後当科外来受診時,白血球 13,900/μl,CRP 32.67mg/dl,LRINEC スコア6点。試験切開にて多量の排液を認めた。今回我々は,壊死性軟部組織感染症の2例を経験した。1例目は敗血症の新定義からのスクリーニングスコアである qSOFA が有用であると考えた。2例目は試験切開が感染の深達度の把握に有用であった。壊死性軟部組織感染症では早期の診断,外科的治療が予後を左右する。qSOFA,LINEC スコア,試験切開を用いて迅速に対応することが有用であると考えた。(皮膚の科学,16: 306-309, 2017)

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© 2017 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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