2017 年 16 巻 6 号 p. 399-403
症例は70歳代,女性。約3ヶ月前に左乳頭部に黒色斑を自覚し,拡大傾向にあるため近医外科を受診した。マンモグラフィー,超音波検査では異常所見を認めず,2016年6月当科紹介受診となった。左乳頭部に一部びらんを伴う約 3cm 大の辺縁不整な黒色斑を認めた。ダーモスコピー所見より悪性黒色腫と診断して,切除術とセンチネルリンパ節生検を施行した。本邦における乳頭部悪性黒色腫の症例報告は調べえた限りでは7例と稀であり,Stage I や II でも遠隔転移や死亡例があることから予後が悪い可能性がある。解剖学とリンパ流を考慮した治療戦略が重要である。(皮膚の科学,16: 399-403, 2017)