2018 年 17 巻 1 号 p. 21-24
60歳代,男性。S状結腸癌術後,再発・転移が認められ,初診8ヶ月前より,mFOLFOX6+Bmab 療法,FOLFIRI+Pmab 療法を施行された。食事摂取量は低下し,徐々に下痢,顔面の色素沈着,口内炎の多発を認めるようになった。初診時,顔面,頸部の露光部に鱗屑を伴う浮腫性紅斑,黒褐色の色素沈着,皮膚萎縮を認めた。会話の問いかけに対し反応はやや緩慢であった。血液検査で血中ニコチン酸,トリプトファン濃度の低下を認め,ペラグラと診断した。食事の改善,アミノ酸配合液による補液,ニコチン酸アミド内服により皮疹,下痢,意識障害の改善を認めた。ペラグラはナイアシンの欠乏によって生じる疾患であるが,欠乏のおこる原因は様々である。薬剤によっても欠乏を起こすことがあり,トリプトファンからニコチン酸への代謝の阻害がおこる。原因薬剤の一つに 5-FU が挙げられるが報告例は少ない。本症例では本剤の投与による代謝障害と摂食量の低下が複合的に原因となり,ペラグラを発症したと考えた。(皮膚の科学,17: 21-24, 2018)