皮膚の科学
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症例
トリアムシノロンアセトニド局注療法にて発毛を認めた円板状エリテマトーデスによる脱毛症の2例
神田 泰洋内山 真樹飛田 璃恵坪井 良治
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2018 年 17 巻 1 号 p. 5-10

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抄録

 症例1:20歳代,女性。頭部に多発する脱毛斑を自覚し,その後,全身症状が出現した。初診時,前頭部から頭頂部にかけて,紅斑を伴う脱毛斑を認め,顔面と手指に紅斑と丘疹がみられた。脱毛斑部の病理組織では毛包上皮基底膜部に液状変性と毛包および汗腺・汗管周囲にリンパ球浸潤を認め,蛍光抗体直接法では lupus band test が陽性であった。臨床および病理組織学的所見,血液検査所見も含め,全身性エリテマトーデスに生じた円板状エリテマトーデスによる脱毛と診断した。脱毛部にトリアムシノロンアセトニドの局注を行い,再発毛を認めた。症例2:20歳代,女性。頭部に多発する脱毛斑と関節痛が出現したため,当科を受診。不完全脱毛斑の病理組織および血液検査所見から,全身性エリテマトーデスおよび円板状エリテマトーデスによる脱毛と診断した。脱毛部へのステロイド局注にて著明な発毛がみられた。円板状エリテマトーデスをはじめとした慢性皮膚エリテマトーデスによる脱毛は全身性エリテマトーデスの初期症状としてみられるので全身検索と注意深い経過観察が必要となる。また,円板状エリテマトーデスによる脱毛は原発性瘢痕性脱毛症に分類され,通常不可逆性かつ進行性であるが,今回は病変が初期であり,早期にステロイド局注を開始したことにより,瘢痕性脱毛への進展を防ぐことができた。(皮膚の科学,17: 5-10, 2018)

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© 2018 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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