皮膚の科学
Online ISSN : 1883-9614
Print ISSN : 1347-1813
ISSN-L : 1347-1813
症例
抗 TIF1 抗体陽性であった肺癌を合併した amyopathic dermatomyositis の 1 例
山本 容子大原 裕士郎西崎 絵里奈細本 宜志吉岡 希磯貝 理恵子山田 秀和
著者情報
ジャーナル 認証あり

2018 年 17 巻 5 号 p. 239-244

詳細
抄録

60歳代,男性。約 4 ヶ月前から痒みを伴う全身の紅斑が出現し, 1 ヶ月前から嗄声が出現した為に近医を受診したところ,胸部レントゲンで左上肺野に結節影を認めたために当院に紹介となった。初診時の皮膚所見は,顔面の紅斑,多形皮膚萎縮,ゴットロン徴候があったが,筋症状なく,クレアチニンキナーゼ・アルドラーゼの上昇はなかった。左手指背側の紫紅色斑からの皮膚病理組織では HE 染色で軽度の液状変性があり,抗 TIF1-γ 抗体が陽性であったために,無筋症性皮膚筋炎(amyopathic dermatomyositis ; ADM)と診断した。左上肺野の結節影は気管支鏡で肺扁平上皮癌と診断された。2015年に我が国の多発性筋炎/皮膚筋炎の診断基準が改訂された。これに伴い,皮膚症状のみでも皮膚病理学的所見が皮膚筋炎に合致するものは ADM と診断することが可能となった。しかし,皮膚筋炎の病理組織はごく軽度の変化のみを示すものもあることから,ADMの確定診断に難渋するが,治療が遅れないようにするのが皮膚科の役目である。近年,多発性筋炎/皮膚筋炎に特異性の高い新たな筋炎特異的自己抗体の同定がすすんだ。筋炎特異的自己抗体は筋炎の病型,病態,臨床経過,治療反応性と密接に関連しており,ADM に対しても病態の把握・治療方針の決定に有用であると考える。 (皮膚の科学,17 : 239-244, 2018)

著者関連情報
© 2018 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
次の記事
feedback
Top