皮膚の科学
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症例
肺癌に対するラムシルマブ投与後に 生じた多発性血管腫の 1 例
山下 千佳紗田中 文白井 洋彦園延 尚子
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2018 年 17 巻 6 号 p. 333-336

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抄録

ラムシルマブはヒト型抗血管内皮増殖因子受容体-2VEGFR-2)モノクローナル抗体で VEGF による腫瘍内血管新生を抑制する。ラムシルマブの主な副作用として高血圧,下痢などの消化器症状,静脈塞栓症が見られるが,我々は皮膚に多発性の血管腫を生じたまれな症例を経験したので報告する。症例は60歳代,女性。病期Ⅳの肺腺癌に対し,セカンドラインとしてドセタキセルとラムシルマブの併用療法を開始した後に全身に血管腫様の紅色丘疹,小結節を生じた。血管腫様病変は徐々に増加,増大し一部で易出血性となった。病理組織学的には真皮内に毛細血管の増生,拡張を認めcapillary hemangioma の像を示した。臨床的に化膿性肉芽腫様の経過を示したため,小結節はすべて切除した。ラムシルマブ投与中止後は血管腫様病変の増大や新生はみられなかった。一般的に化膿性肉芽腫は外傷やウイルス感染の他に,薬剤性に生じるとされる。過去の報告ではラムシルマブ投与後の血管腫形成に遺伝子変異の関与が示唆されており,その発症機序には今後さらなる検討が必要である。 (皮膚の科学,17 : 333-336, 2018)

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© 2018 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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