皮膚の科学
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症例
長期経口ドキシサイクリン療法による治療が奏効した Morbihan病の1 例
宮本 花里奈林 綾乃筑後 孝章
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2020 年 19 巻 4 号 p. 217-221

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抄録

36歳,男性。 6 年前から両上眼瞼の浮腫が出現し,鼻部や両頬部にも無症候性紅斑が拡大してきた。血液検査で異常所見はなかった。皮膚の病理組織学的所見では,真皮浅層にリンパ管の拡張と血管・毛包周囲にリンパ球主体の炎症細胞浸潤があり,肉芽腫性変化はみられなかった。Alcian blue 染色で毛包周囲に酸性ムコ多糖の沈着,Toluidine blue 染色で間質に肥満細胞が散在性に多数みられた。以上より Morbihan 病と診断した。経口プレドニゾロン 15 mg/日を 1 ヶ月間服用したが症状は軽快せず,経口ドキシサイクリン 100 mg/日に変更した。内服 3 ヶ月後から両頬部の紅斑は徐々に消退し,12ヶ月後には顔面の皮疹はほとんど消退した。Morbihan 病は決められたガイドラインや治療法はなく,診断や治療に難渋している症例も少なくはない。今回我々は本邦での統計19例と自験例との比較検討を行い,病理組織所見での肉芽腫性変化や肥満細胞の判別が Morbihan 病の治療薬を選択する上で有用な手段となり得ると考えた。 (皮膚の科学,19 : 217-221, 2020)

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© 2020 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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