2003 年 2 巻 4 号 p. 269-277
肥満細胞症は,皮膚をはじめとする全身諸臓器で肥満細胞が増加する稀な疾患である。成人ではヒト肥満細胞増殖因子であるstem cell factor(SCF)の受容体をコードするc-kitに活性型突然変異(Asp816Val)があり,SCF非依存性に肥満細胞が増殖することが最近明らかにされたが,小児には通常この変異を認めない。既に成熟し末梢組織に分布する肥満細胞もSCFにより増殖することから,局所でのSCF産生亢進が小児の肥満細胞増殖の原因と考えられる。治療は現在のところ対症療法しかない。チロシンキナーゼ阻害剤STI571はAsp816Valの活性には無効であるものの,野生型Kitの活性を阻害するため,変異を持たない小児例の治療に有効である可能性がある。