皮膚の科学
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症例
乳房外パジェット病に対する放射線照射
~関西医科大学総合医療センターにおける15例の検討~
小林 里佳岡本 千明山科 茉由津田 真里四十万谷 貴子寺井 沙也加槇村 馨谷村 裕嗣志賀 淑子清原 隆宏
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2025 年 24 巻 1 号 p. 20-26

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抄録

乳房外パジェット病の標準治療は十分な切除マージンによる外科的切除であるが,肛門や尿道の切除に伴う人工肛門や尿路変更などにより,著しく QOL を損なうことも多い。手術不能の乳房外パジェット病に対して放射線治療が選択されることがあるが,まとまった報告は少なく,根治的放射線照射の意義は確立していない。本人希望や認知症などの理由で放射線照射を選択した15例について報告する。平均年齢は80.1歳で,男女比は 4 : 11 であった。平均放射線照射量は 55.4 Gy で,照射後の平均観察期間は31.1ヶ月であった。全例において, 6ヶ月後には病変は肉眼的に消退した。経過中の再発は5例で,平均16.8ヶ月時であった。3例は局所再発に対する放射線照射や切除で,その後再発なく経過している。その他の2例のうち,1例は経過中に肝転移・腹部リンパ節転移を認め,死亡した。もう1例は尿道浸潤があり,膀胱尿道全摘術を施行後,術後腹膜炎で死亡した。根治切除が困難な乳房外パジェット病に対して,QOL 維持の観点から放射線照射は有用である。しかしながら,相応の再発リスクはあり,長期間の経過観察を要すると考える。(皮膚の科学,24 : 20-26, 2025)

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© 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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