2025 年 24 巻 4 号 p. 410-415
25歳,女性。顔面に浮腫性紅斑が出現し,約4ヶ月間複数の皮膚科でステロイドの内服・外用加療をうけたが悪化し当科を紹介受診。初診時,両眼瞼から頬部にかけて表面に融合性の膿疱をともなう境界明瞭な浮腫性紅斑を認め,前腕や手背にも小型の環状紅斑が散在していた。真菌直接鏡検では陰性であったが,頬部皮疹からの真菌培養により Microsporum canis(M. canis)を同定し,ITS 領域の遺伝子解析により確定診断に至った。皮膚生検では角層内に菌体と膿疱形成を認め,表皮基底層の液状変性,真皮血管周囲にリンパ球,形質細胞の浸潤を認めた。イトラコナゾール 200 mg/日2ヶ月間の内服加療によりすべての皮疹は治癒した。長期間飼育している患者宅の猫3匹に病変はなく,発症の1週間前に短時間接触した多数の脱毛斑や浸出液を伴う皮膚病変を有する野良猫が感染源と推測された。M. canis は動物好性の皮膚糸状菌であり,人間にとっては異種病原体であるため,感染により強い免疫反応を惹起しやすい。そのため,白癬に気づかれずステロイド加療が誤用され宿主の免疫反応が修飾され,異型白癬を呈することが少なくない。多様な臨床像と診断の難しさを十分に認識し,直接鏡検陰性であっても繰り返し鏡検や,真菌培養,皮膚生検を含む適切な検査に基づく正確な診断および早期治療を行うことが求められる。(皮膚の科学,24 : 410-415, 2025)