アトピー性皮膚炎においては汗を悪化因子あるいは増悪因子とする報告が多いが,病態形成に関与する汗の意義は不明の点が多い。
今回我々は成人アトピー性皮膚炎患者18名を対象にし,アセチルコリンのイオントフォレーシス導入法を用いた定量的発汗機能検査を行った。アトピー性皮膚炎患者では直接性の発汗は健常人と有意差は認めなかったが,軸索反射性の発汗は病変部,健常部いずれにおいても低下が見られた。また治療により,皮膚症状が軽快した時点で4名に同様の発汗検査を行ったが,病変部,健常部ともに発汗機能の改善が見られた。これらの結果よりアトピー性皮膚炎患者では発汗に影響を及ぼすような器質的な皮膚の異常は見られないこと,皮膚炎の悪化時,病変部のみでなく健常部においても軸索反射性の発汗低下が生じており,ステロイド外用などによる軽快時その改善が見られることより,発汗低下にIPSFなどの免疫学的な機序の関与も考えられた。