2006 年 5 巻 Suppl.6 号 p. A26-A31
塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の細胞内シグナル伝達系を明らかにする目的で,創傷治癒過程解析モデルとして用いられるヒト真皮線維芽細胞含有コラーゲンゲルを用い,Rhoファミリーを中心に解析した。本研究では,bFGFに加えて創傷治癒促進薬として将来の応用が可能であると考えられるリソフォスファチジル酸(LPA),血小板由来成長因子(PDGF)との比較検討を行った。その結果,bFGFはヒト真皮線維芽細胞において,Phosphatidylinositol-3-Kinase→Rac→Rho→Rho Kinaseの経路を活性化することが明らかとなった。これはPDGFに類似し,またLPAとは異なる系である。将来の創傷治療における増殖因子カクテル療法においては,bFGFをPDGFではなく,LPAと併用することで,少なくとも2つのシグナル伝達系が活性化する可能性が示唆された。