2007 年 6 巻 1 号 p. 38-43
62歳,男性。1年以上前から左大腿部の皮下腫瘤に気付いていた。自覚症状が無く放置していたが,軽快しないため受診した。初診時,左大腿内側に表面がやや赤褐色調でクルミ大,弾性軟の単発性皮下腫瘤を認めた。腫瘤の移動性はなかった。表皮嚢腫を疑い,局麻下に切除術を施行した。病理組織学的には,脂肪織内に好酸性外被に覆われ,粗な内部組織を有する索状の虫体を認めた。虫体内部には排泄管や筋線維束,Kossa染色で黒褐色に染まる石灰小体が見られ,マンソン孤虫症と診断した。感染経路の特定には至らなかった。術後血清抗マンソン孤虫抗体価が持続的に陽性であったため,駆虫剤を投与し経過観察中である