2007 年 6 巻 4 号 p. 364-367
53歳,男性。19歳時,十二指腸潰瘍による穿孔にて胃切除をうけた。初診2ヵ月前より右鼠径部の皮下硬結および陰嚢腫大が出現した。陰嚢部皮膚生検にて,皮下組織部(薄い平滑筋層の肉様膜内)に異型細胞の浸潤と周辺部に膠原線維の増生を認めた。全身検索の結果,残胃に印鑑細胞を含む低分化型腺癌が確認され,さらに腹膜播種,リンパ節転移,精巣周囲・精索への浸潤も認めた。残胃癌の全身転移と診断され,化学療法を開始したが,皮膚症状出現より約7ヵ月後に全身状態の悪化により永眠された。