2008 年 7 巻 2 号 p. 226-229
52歳,女性。左側頭部の悪性黒色腫の広範囲切除術と遊離植皮術を行った(ClarkレベルV,Breslow’s tumor thickness 4mm)。左頚部リンパ節郭清で,1個に微小転移を認めた。術後にDAV-Feron療法を施行後,IFN-βの創部への局注を行っていた。術後4年3ヵ月後に皮膚転移を生じ,5年6ヵ月後に肉眼的血尿にて泌尿器科を受診した。膀胱鏡,CTにて膀胱に腫瘤を認め,生検にて膀胱転移と診断された。免疫療法,Dac-Tam療法を試みたが無効で,骨,脳転移が出現し,初診より6年5ヵ月後に永眠した。悪性黒色腫の膀胱転移は比較的稀であるが血尿や下腹部痛のために患者のQOLを低下させる要因となり得る。これらの症状を認めた際には,転移を念頭に置き診察にあたる必要があると考える。