皮膚の科学
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塩基性線維芽細胞増殖因子による創傷治癒の質的変化に関する基礎的検討
安部 正敏周東 朋子横山 洋子石川 治
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2009 年 8 巻 Suppl.11 号 p. A35-A41

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抄録
近年,塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)は,難治性皮膚潰瘍において治癒を促進するのみではなく,創傷治癒の質的改善いわゆるscarless wound healingをもたらすことが臨床的に明らかとなりつつある。今回我々は,創傷治癒成熟期のモデルとして筋線維芽細胞含有コラーゲンゲルを用いて,創傷治癒の質的変化に関する基礎的検討を行った。その結果,bFGFはTransforming Growth Factor(TGF)-β1による線維芽細胞のα-smooth muscle actin発現誘導を遅延させた。また,筋線維芽細胞含有コラーゲンゲルは無刺激では収縮するが,bFGF添加によりゲル収縮が抑制された。さらに筋線維芽細胞において,bFGFはRhoとRho Kinaseを活性化させたが,ミオシン軽鎖のリン酸化には影響を及ぼさなかった。一方,bFGFは線維芽細胞に比較して筋線維芽細胞で高率にアポトーシス誘導した。この機序として,PI3K→Aktのシグナル伝達系抑制効果の関与が示唆された。
本研究結果より,bFGFは創傷治癒過程成熟期における筋線維芽細胞に対して,TGFβ1による筋線維芽細胞誘導を阻害し,さらにアポトーシスを誘導することで創傷治癒の質的変化をもたらす可能性が示唆された。
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© 2009 日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
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