抄録
前立腺肥大症の経尿道的前立腺切除術では潅流液に3%のソルビトール液を用いるために,破綻した血管から吸収された潅流液により低ナトリウム性のTUR症候群を起こすことが知られている.潅流液の吸収による体液バランスの変化を61 名の患者で測定した.吸収潅流液(V-abs),出血量(B-loss),細胞内液増加量(ΔICF),細胞外液増加量(ΔECF)を検査データから計算により求めた.TUR症候群を来した患者群(TURS)と無症状患者群(ASTM)に分けた.出血量はTURS(平均860ml)がASTM(平均170 ml,p < 0.01)より有意に多かったが,V-abs(1740 対1680ml),ΔECF(760対1170ml),ΔICF(130対340ml)には有為な差が認められなかった.無症状群ではΔECF(1170ml)が出血量(170ml)を代償できたが,TURSのΔECF(760ml)は出血量(860ml)を代償できなかったために,症状が現れたと考えられる.結論として,TUR症候群中の精神症状や循環系の変動は,潅流液による希釈性の低ナトリウム血症というより,出血による血管内容量の低下を吸収潅流液が代償できないことが主因と考えられた.