抄録
小児のGFR推算値(eGFR)算出には,血清クレアチニン(sCr)と身長を用いた男女別のGFR推算式が頻用されている.ただし,筋肉量が極端に少ない重症心身障害児のeGFRはsCysCで算出することが推奨されている.またその後に作成されたsβ2MG eGFRも筋肉量が少ない患者に適用しうるとされているが,sCysC eGFRとsβ2MG eGFR の整合性は検討されていない.本研究の目的は重症心身障害児におけるsβ2MGを用いた推算式の有用性を明らかにすることである.
【方法】埼玉医科大学病院小児科で在宅医療管理を行っている15歳未満の大島分類1に該当する重症心身障害児12例を対象とした.非感染時の定期受診時におけるsCr,sCysC,sβ2MG値から算出したeGFRを比較検討した.
【結果】対象年齢は中央値3.7歳,身長は中央値-3.7SD,体重は中央値11.8 kgであった.各eGFRの中央値は,sCr eGFR 113.1,sCysC eGFR 117.6,sβ2MG eGFR 81.9 ml/min/1.73 m² であった.sCysC eGFR とsβ2MG eGFR の間には,強い正の相関が認められ(r=0.9091, p<0.0001),sβ2MG eGFR は対応するsCysC eGFRよりも全例において有意に低値だった(p<0.0001).sβ2MGが上昇しsβ2MG eGFR が低下する要因として,潜在する炎症性疾患が関与する可能性について検討し,非発熱時で感染徴候がないにもかかわらず7例(70%)にCRPの上昇を認めたことから,体温や血液検査では現れない慢性炎症がsβ2MGの上昇に少なからず影響している可能性が考えられた.
【結論】大島分類1の重症心身障害児では,sβ2MG eGFRはsCysC eGFRより低値であった.sCysCとsβ2MGに影響を及ぼす各因子を十分に検討し腎機能を評価する必要がある.