本研究の目的はリュックサック型体幹装具における重り位置の違いが,変形性脊椎症患者の歩行動作における体幹に加わる外力モーメントに及ぼす影響を明らかにすることである.変形性脊椎症患者5 名と健常高齢者9 名が歩行動作を行い,3次元モーションキャプチャーシステム(VICON)を用いて動作を,フォースプラットフォーム(Kistler)を用いて床反力を計測した.実験で用いた装具は背部装具,腰部装具および骨盤装具で,それぞれの装具後面には1 kg の重りを付けた.患者群の背部装具と骨盤装具では,体幹姿勢と歩容に変化はないが,1 歩行周期における下胴下端まわりの前傾モーメントの最大値が減少した.歩行中の体幹に加わる外力モーメントを成分別にみると水平前後方向の力によるモーメントが最も大きかった.これらのことから背部装具と骨盤装具では腰背部筋群への負担を軽減させる効果があると考えられる.また,患者固有の体幹姿勢と歩行速度を考慮して装具の重り位置を調節することで,装具の適合性はより向上すると推察される.