2003 年 1 巻 p. 141-148
地震などの自然現象が災害となる過程には,人間の活動が深く関与している.本論文では,この種の災害のリスクと人間行動との関連を整理するとともに,災害リスクのマネジメント戦略に関して考察する.具体的には,災害が低頻度な事象であるということが,災害の発生や脆弱性に関する認知にバイアスを発生させうること,大規模な被害の発生が空間的な相関性の高さを意味することを示し,災害が本質的には局所的な現象であるという特徴を指摘する.このような特色が存在するがゆえに災害リスクマネジメント施策の設計・評価に際して、総合的な施策構成や地域間の相互連携が重要であることを指摘する.その上で,これらの施策の望ましい組み合わせを求めるための方法論上の課題を提示する.