2003 年 1 巻 p. 404-413
多発する医療事故を受けて, 各業界では事故情報を収集・分析する機関を設立し, 将来の事故予防に役立てようとの試みが見られる. 事故情報の収集によって真の原因が究明されることが期待されるが, これは一方で収集した情報が法的責任追及の場で如何に利用されるかの問題ともなる.本稿では, 日本の事故情報収集システムに期待する機能を明らかにすべきであると考え,刑事, 行政, 民事それぞれの法的責任の観点から, 米国との比較検討及び分析を行った. 事故情報収集システムの機能は, 真の原因究明による再発防止と医療機関への情報支援による医療の質の向上にあるとしたうえで, 医師患者間の情報格差の是正, 国民全体による医療安全への関与, 民事責任と刑事責任の振り分けなどの点から考察を加えた.