CO2を大気中から隔離する技術であるCCSが近年,有望な気候変動の緩和策として注目されている.しかし,CCSの技術開発には技術的・政策的なリスクをめぐって論争がある.本稿は言説分析によって日本の新聞報道におけるCCSのフレーミングを明らかにし,メディア言説がCCSのガバナンスに対して持ちうる政策的含意について考察した.日本の新聞報道はCCSを大幅なCO2排出削減が可能な革新的技術と表象し,技術開発に対する楽観主義的な言説を構築する一方で,CO2漏洩リスクやカーボン・ロックインといった問題を言説的に捨象していた.日本のCCSガバナンスの文脈では,日本の新聞報道は既存のテクノクラート主義的な統治構造を言説的に補強する政治的な機能を持っていることが指摘できる.