2006 年 4 巻 p. 136-146
高レベル放射性廃棄物の最終処分施設の建設は, わが国においても重要な政策課題となっている. しかし, 施設を建設する立地点の選定は極めて重要な社会意思決定が求められるものと認識されている. 立地点調査の中核となる地質環境調査とその結果もたらされる地質環境情報は, 高レベル放射性廃棄物の最終処分施設計画の中でもとりわけ「情報の非対称性」が著しく, 施設計画の社会意思決定を困難にしている要因の一つではないかと考えられる. ここでは, 地質環境調査の有する情報の非対称性に着眼して, 地質環境調査に関わる情報を社会と共有し, 共同で意思決定をおこなうためのツールとして, 「ITベース・調査システムフロー」を開発した. 「ITベース・調査システムフロー」は, 地点選定における調査から評価に至るプロセスと関連する技術情報を透明性および追跡性を確保し, かつ, 視覚的に分かりやすく表現することを試みるもので, 高レベル放射性廃棄物の最終処分施設計画における情報の非対称性の緩和に役立つものとと考えられる.