2008 年 5 巻 p. 1-11
本稿では,日本における省エネ技術の研究開発・導入普及事例の中から,政府主導型ではないが,完全な民間技術開発でもない,CO2 ヒートポンプ給湯器「エコキュート」事例を取り上げ,技術開発のあり方と公共政策の役割を論じる.技術がどのように「死の谷」を越えたのか,どのような経緯で製品化に至り,さらに市場での急速な普及を達成したのか,経緯を把握した上で,初期の基礎的な研究開発の局面での公的セクターによる技術開発の継続性・多様性確保の役割,製品化局面での”relevant marginal actor”の機能,普及段階での公的支援の重要性を指摘する.最後に,家庭用ガスエンジンコージェネレーション給湯器「エコウィル」事例との比較を通して,特に普及段階における公共政策の役割について,その課題を指摘する.