2010 年 7 巻 p. 76-86
原子力をはじめとした高度な科学技術は,それについての知識や理解,受容性の判断について,専門家と非専門家との間に大きなギャップがあるといわれている.著者らは,高度な科学技術のうち,高レベル放射性廃棄物処分を取り上げ,市民と専門家とがその技術や安全性について話し合うためのフィールドORCATをウェブ上に構築し,2005年におよそ3カ月の運用実験を実施した.この結果を用いて,本稿では「専門家から市民へ」および「市民から専門家へ」の双方向で情報の流れが成立しているかを分析した.その結果,ORCATは,「専門家から市民へ」の流れである情報提供フィールドとしての有効性は認められるものの,「市民から専門家へ」の流れは,いまだ十分とはいえないことが示された.