2012 年 9 巻 p. 109-119
情報化の伸展と市民社会の成熟,また財政の緊迫化により,行政の持つ情報の更なる活用が求められている.本研究では,行政と市民の間における情報ギャップ解消の一手段として公的営造物を対象とするトレーサビリティシステムを想定し,その実現に向けて調査・分析を行っている.
本論文では,日本の行政情報に関する現状について,市民の情報取得という観点から整理を行い,その課題の抽出を行う.次にそれらを基にシステムの概要を提示し,そこで登載すべき情報を決定するまでの研究過程を示す.そして,システム試用実験と市民連続行動調査の分析結果を示して,市民の公的営造物に対する情報ニーズの存在と即物的な情報提供に対する市民反応について述べる.