測地学会誌
Online ISSN : 2185-517X
Print ISSN : 0038-0830
ISSN-L : 0038-0830
長大トンネルにおける地殻変動連続観測―沈み込み帯のテクトニクス研究のために―
竹本 修三
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 35 巻 2 号 p. 243-256

詳細
抄録

 地下観測坑道内で行われている地殻変動連続観測からその地域のテクトニックなひずみ場の時間的変化の様相を明かにするために考慮しなければならないいくつかの基本的な問題点について調べた. まず,地殻変動連続観測に及ぼす気象的擾乱については,坑道の長さが30mの岩倉観測室の場合,降雨及び気温変化に伴うひずみ変化が10-6オーダーに達するのに対して,全長1830mの長大トンネルの入口から400~500mの間に多数の観測計器が配置されている天ヶ瀬観測室においてはこのような変化はほとんど認められない. 次に,天ヶ瀬観測室の坑道に沿う方向に設置された多数の伸縮計で得られた潮汐ひずみ変化の観測値を理論的に予測される値と比較検討することにより,これらの伸縮計の信頼度を調べた.その結果,レーザー伸縮計で得られた観測値が理論的な予測値に最も近かった. 以上の結果から,500~1000mの長さの長大トンネルにおいて,レーザー伸縮計のような信頼性の高い観測計器を用いた連続観測を長時間続けると共に,トンネル内における光波測量を繰り返し実施すれば,10-7/年のオーダーのテクトニックなひずみ変化を精度よく検出することができると考えられる.

著者関連情報
© 日本測地学会
前の記事 次の記事
feedback
Top