1997 年 31 巻 2 号 p. 12-19
この論文では,わが国の大企業における雇用関係の変化にともない,結果の公平性(distributive justice)から,過程の公平性(procedural justice)に人的資源管理システムの焦点を移していかなくてはいけないことを議論する.なぜならば個別の交換内容をはっきりさせ,短期的に決済をするような雇用関係が増えてきたからである.その結果,個人個人の企業への貢献の内容を厳密に評価し,それに対する企業の報酬義務を明確にするための,評価・処遇システムの透明性・納得性が重要になりつつある.これを過程の公平性と呼ぶ.そしてわが国の場合,過程の公平性を確実に担保するために,企業のガバナンス構造のデザインを議論しなくてはいけないことを主張する.