「機械」のメタファーは組織研究において非常に強い影響力を持ってきた.コンティンジェンシー理論においても,「有機体」のメタファーが提唱されていたが,実際には「機械」メタファーの影響から逃れてはいない.その原因は,テーラーの科学的管理法の時代からコンティンジェンシー理論に至るまで,経営学の目的は経験事象の体系的な観察から実証的に因果関係を確立することであるという「経営学の科学化」志向があり,さらにその背後には決定論的・機械論的な世界観が存在していた.日本における組織研究では,1980年代半ばから「自己言及」という論理タイプか導入され,決定論的世界観と決別しようとする方向性が打ち出されてきたものの,新しい理論構築のための基礎が十分に確立されていないため,現在の組織研究は進むべき方向を見失っている.