1999 年 33 巻 1 号 p. 69-79
技術発展の方向性を規定する要因については,長年にわたり議論が展開されてきた.特に最近では,経営学をはじめとする技術研究で支配的な枠組であった「決定論的視座」に対抗する「非決定論的視座」に基づく議論が,この領域で活発に展開されている.そこで本稿では,議論の前提に遡って技術発展の規定要因に関する既存の文献を整理・検討した上で,「技術システムの構造化理論」という概念枠組を提示する.この概念枠組は,二つの視座を発展的に統合するものである.ただし,ここでの焦点は,決定論的視座を擁護するのではなく,むしろその重大な問題点を明らかにすることに,当てられる.