本稿は,大手電子部品メーカーの国内における成長とその後の東アジアへの海外生産シフトの過程で,同社が事業拠点を展開した地域においていかに産業集積が形成され,それがどのような構造調整を経てきたのかということを明らかにする.
目的は2つある.第一は電子機械産業の海外生産シフトが進む中で,国内の産業集積地域における空洞化の状況を把握するとともに,産業集積内に見られる比較優位分野への調整の方向性を明らかにすることである.第二はこのような比較優位分野への構造調整を可能にさせている条件を,その地域における過去の経路依存性,具体的には地域に形成されてきた生産分業の構造や技術の蓄積や継承性などの視点から明らかにすることである.