ソシオロジ
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論文
介護保険サービスにおける介護労働と賃金
――賃金規定要因は分位点により異なるのか――
大久保 将貴
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2017 年 61 巻 3 号 p. 3-22

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抄録

本稿の目的は、介護保険サービスにおける介護労働者の賃金規定要因を記述することである。介護保険創設以降、介護労働者の離職率の高さの原因として、低賃金が挙げられて久しいが、介護労働者の賃金規定要因については不明な点が多い。介護労働者の賃金を分析した先行研究の全ては、分布の中心である平均値を予測するものであった。しかしながら、平均値を予測する通常の回帰分析では、観測された異常値に影響を受けやすく、分位点ごとに異なる規定要因を考慮できない。本稿では、これらの問題に対処するため、分位点回帰を採用して賃金規定要因の分析を行った。分位点回帰モデルを採用するのは、分析者が任意に設定した賃金分布の分位点について、外れ値の影響を回避しながら賃金分布全体の変化を記述できるためである。在宅支援サービスが中心である訪問介護員と、施設サービスが中心である介護職員それぞれについて分析を行った結果、賃金の規定要因は分位点ごとに大きく異なるという先行研究では言及のなかった新たな知見を得た。すなわち、低賃金グループと高賃金グループでは賃金規定要因が異なり、とりわけ、男性/女性、正規/非正規、介護福祉士保有/非保有者間の賃金格差が大きいという知見である。賃金分布の記述から、男女間賃金格差や正規/非正規間賃金格差の是正は、介護労働市場においても喫緊の課題であることが分かる。さらに、分析結果からは、事業所レベルで対応できることとして、介護労働者に対する資格取得の積極的支援等が有効であると考えられる。

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