2024 年 48 巻 1 号 p. 7-11
概要:本研究は,認知機能低下のある高齢者に対しアビー痛みスケール日本語版を用いて疼痛の程度を評価し,薬剤による除痛を行ったことによる効果を明らかにすることを目的とした.島根県立中央病院の整形外科病棟において,主病名が大腿骨骨折で認知症高齢者の日常生活自立度判定Ⅲ・Ⅳ・Mの患者を対象とした.対象者をNumerical Rating Scaleで評価を行った対照群とアビー痛みスケール日本語版で評価を行った介入群に分類し,除痛の効果について分析した.鎮痛剤の使用回数に有意差は認めなかったが,使用した割合は対照群より介入群が増加し,退院時のFIM得点,尿路感染症と心不全の発症に有意差を認めた.これらのことから,アビー痛みスケール日本語版による疼痛評価による除痛は,認知機能低下のある高齢者に対してADLの拡大や合併症の予防に効果があることが示唆された.今後,より高い効果を得るために,院内全体への周知を行っていくと共に,アビー痛みスケール日本語版での評価が適切に行えるように継続的な教育が必要である.