以上, 自験例をもとに, 腰椎変性疾患に対する除圧術, 固定術につき記載した.本文で述べた如く, 固定術の適応, 術式については様々な見解があり, 未だ確立されたものはない.近年開発された各種内固定器具についても, 強固な固定が得られる反面, 支持性のみでなく運動性を有している脊柱の本来の機能から考えるとあまりに固定が強固過ぎ, 運動性が保持されていないとの反省がなされつつある[10].また, これら内固定器具の使用に際しては, あくまで骨性固定が得られるまでの仮固定であるとの大原則は忘れてはならない.特に, 腫瘍例と異なり長期の生命予後が期待される変性疾患においてはこの点を考慮すべきである.ほとんどの器具でscrew, plate, rodの折損という現象が生じ得ることが報告されている.将来的には脊柱の, 支持性, 運動性機能の両面につき配慮した術式, 固定器具が開発されることが望まれる.