社会政策
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韓国の老人長期療養保険制度の成立背景と特徴 : 日韓比較の視点から
徐 東敏近藤 克則
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2009 年 1 巻 3 号 p. 79-90

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抄録

日本の介護保険を一つのモデルにした韓国の老人長期療養保険制度が2008年7月に導入された。本稿の目的は,日韓比較の視点から(1)韓国の同制度の特徴を考察し,(2)成立背景と制度の違いを社会経済的発展段階などを考慮して分析し,(3)日本の介護保険制度に対する第三者(韓国)による評価を検討することである。韓国の同制度の特徴は(1)全年齢が被保険者,(2)要介護認定対象者は高齢者の3%程度の中重度要介護者のみ,(3)給付種類の抑制の一方で現金給付の導入,(4)全国単一の保険者,(5)ケアマネジャー資格制度導入の見送り,(6)国庫負担の抑制と多段階の自己負担率などに要約される。日本をモデルにしながら制度が異なっている要因は,(1)社会経済的成熟度の違い,(2)国内の制度環境,(3)日本の制度に対する評価の3つに分けられる。日本の介護保険制度に対して,韓国政府は軽度要介護認定者の急増やケアマネジャー資格導入の費用と効果などの点を消極的に評価していた。

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© 2009 社会政策学会
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