2024 年 16 巻 3 号 p. 153-165
本稿の目的は「ブルーカラーのホワイトカラー化」の中でも内部昇進制について、その成否を実証的に検証することにある。先行研究によれば、日本的雇用システムの特徴はホワイトカラーとブルーカラーが「従業員」として同一の人事管理の下に置かれることにあり、ブルーカラーにも昇進可能性があるとされる。しかし、内部昇進制は間接的な証拠に依拠して議論されるか、個別企業の事例研究によるものが多く、個人の職歴を追跡して直接的に検証したものは乏しい。本稿では「社会階層と社会移動に関する全国調査」の1965-1995年の4回分のデータを用いることでこの点を検証した。結果、⑴大企業ブルーカラーの昇進可能性は出生コーホートが下るほど低下しており、⑵大企業ブルーカラーの勤続年数の効果も乏しく、ホワイトカラーに近似した昇進構造を持っているとは言い難い。以上の結果は、内部昇進制について、先行研究は過剰に強調していた可能性を示唆する。