社会政策
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福祉社会の変貌と労働組合(<特集>福祉社会の変貌と労働組合-社会政策学会第118回大会共通論題)
禹 宗[ウォン]
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2010 年 2 巻 1 号 p. 5-16

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抄録

本稿は,共通論題の各報告をふまえ,歴史的な視点から企業別組合の再生可能性を検討する。企業別組合の機能は,オイルショックを分岐点として労働市場規制から経営に対する発言へシフトした。「生産主義」に基づき,ストライキを放棄したといえる。これは,戦後労働組合運動がかちとった「ブルーカラーのホワイトカラー化」のある種の到達点である。しかし,この行動様式は「民主主義」に問題点を抱えていた。多数のブルーカラーにまで年功的なキャリアを保障するのは企業にとって負担となるので,労使は妥協し,女性パートや請負労働者などをバッファーとした「複線管理」を行うことで,正社員の地位を維持したのである。この行動様式に変化をもたらすためには,傾倒した生産主義から抜け出すこと,広い範囲の労働者に職業訓練や職業紹介を行うなど企業別組合の限界を乗り越える試みをすること,そして改めて「身分の撤廃」に取り組むことが求められる。なお,後者のためには年功カーブ自体を修正する必要がある。

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© 2010 社会政策学会
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