最低賃金法は2007年に改正公布,2008年から施行されたが,その条文のうえで「(目的)第1条」に変化がみられるものではない。しかしながら,社会的な合意として,賃金のどんな最低額を保障したいのか,すなわち,最低賃金制を通じて何を保障したいのかという点については,審議会による決定を中心に据えるようになった1968年の改正以降,いくぶん変化がみられる。なかでも2007年の改正は,その指標あるいはウェイトの明らかな変化をもたらした。本稿では,そのウェイトのおき方を,生計費原則と相場原則というようになるべく単純に二分してみることにより,審議会方式以降の水準決定の特徴を浮き彫りにしたい。