2010 年 2 巻 2 号 p. 59-71
本稿では,首都圏青年ユニオンにおいて組合員が高い割合で定着している要因を明らかにする。これまでコミュニティ・ユニオンにおける組合員の定着率が低いことは指摘されてきた。しかし,定着率を高める要因についての実証研究はほとんどない。例外である小谷幸による東京管理職ユニオンの事例研究は,「個人を重視し,ボランティアを活動の主力とする」組織理念が受け入れられていることが「組合員の定着率の高さと関係ありそうだ」と分析した。しかし,あくまで推測にとどまり,また組織理念を受容する客体としてのみ組合員を捉えている点に方法的な問題がある。それに対し本稿では,高い定着率を保っている首都圏青年ユニオンの事例に着目し,組合員へのアンケートおよびインタビューによって得られたデータを分析する。そして,運営方針と組合員の「主体性」の齟齬を受容する組織構造の柔軟性こそが,組合員の定着性を生む要因であることを明らかにする。