社会政策
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イギリスにおける退院支援システムと医療・介護の連携(<小特集>高齢者ケアの供給システムとサービス従事者)
白瀬 由美香
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2012 年 3 巻 3 号 p. 68-77

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抄録

本稿は,新労働党政権期のイギリスにおける医療・介護連携について,急性期病院からの退院支援システムに注目し,制度間の調整施策とサービス従事者の位置付けを検討した。この時期の施策は,制度の基本枠組みを維持したまま,NHS,社会福祉サービスに経済的インセンティブを与え連携を促した点に特徴があり,退院遅延事例の減少,介護アセスメント期間の短縮が実現された。多職種チームでのケースマネジメントでは,医療・介護双方の知識・技能を持つ地域看護師の重要性が高まり,家庭医等の役割を再検討する可能性が示唆された。また,介護職には国家資格がなく,看護助手等の医療補助職と共通の職業訓練で養成されることが明らかになった。さらに,新設の上級医療補助職は従来の専門職資格との業務内容,給与水準の違いが問題となりうると指摘された。これらの状況は総じて,介護よりも医療が中心に置かれた地域包括ケアの形成を示していた。

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© 2012 社会政策学会
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