社会政策
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労働組合の変貌 : 非正規労働者の組織化とコミュニティ・ユニオンを中心とする研究動向の検討
兵頭 淳史
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2013 年 4 巻 3 号 p. 141-151

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抄録

本稿の目的は,近年における日本の労働組合研究,とりわけ企業別労組による非正規雇用労働者組織化とコミュニティ・ユニオン(CU)に関する研究の主要な成果を検討することを通じて,日本の労働組合に生じつつある変化とその展望について考察することにある。すなわち,企業別労組のなかにも非正規労働者の組織化に乗り出す組合が登場しつつあり,それは多くの場合,相互信頼型労使関係の再編・強化を目指すものであるが,いくつかのケースでは,組織化の過程で労使間の矛盾や相克も浮上させている。またCU研究では,職場ではなく個人に基礎をおいた社会運動への流れがより強まる展望が示される一方で,いくつかの事例研究は,組織化の基礎としての職場の意義を再発見する。つまり,企業別労組研究とCU研究という二つの異質な研究動向は,部分的には,職場を基礎とした対企業自律的な労働組合再生の可能性を示唆するという地点で交錯を見せているのである。

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© 2013 社会政策学会
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