2013 年 5 巻 2 号 p. 9-20
東アジア比較社会政策は制度研究に偏った傾向があるが,その研究対象を拡大していくためには,「比較」と「政策」という言葉の意味に対する哲学的解釈と哲学的問題提起が必要である。それによって社会政策の範囲に「対応しないと決めた決定」も含まれるようになり,社会政策研究対象がより豊かになる。本稿においては,現在の東アジア社会政策の比較研究において,制度論以外に考えられる社会政策比較研究の素材や事例を,次の3つの類型に分けて提示する。1つ目が概念を明確にするための比較研究である。さらに2つ目が特定社会政策の起源を説明する政策形成過程,分析的フレームワークを活用した政策内容研究,評価基準の提示による政策結果研究である。そして3つ目がノンディシジョン(non-decision)を確認するための比較研究である。