社会政策
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中国の最低生活保障制度のゆくえ : ウェルフェアとワークフェアの狭間で(<特集>東アジア社会政策研究が問いかけるもの-理論的枠組みと実証分析)
朱 [ミン]
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2013 年 5 巻 2 号 p. 46-55

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抄録

今日の欧米の公的扶助制度は,(1)「最後の拠り所」というセーフティネットの維持,(2)「貧困の罠」,「福祉依存の罠」を回避し,労働インセンティブを高めることによる財政的負荷の軽減,という2つの異なる要請に迫られているという。中国の最低生活保障制度は,まさにこの2つの要請の狭間で呻吟している。1999年に国有企業から排出された大量の余剰人員のために創設されたこの制度は,2000年以降,(1)に対応するため,「応保尽保」による適用対象の包摂,「分類施保」によるニーズに対する確実な保障,(2)に対応するため,労働能力をもつ者に対する給付基準の引き下げ,ハードなワークフェアが行われ,いわば選別主義の拡充と選別主義の限定化が並行している状況である。本稿は,中国の社会保障制度における公的扶助の位置づけを念頭に置きながら,最低生活保障制度の導入過程と展開を概観し,その背景と特徴を考察することによって最低生活保障制度が置かれている難しい状況を明らかにする。

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© 2013 社会政策学会
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