社会政策
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過疎高齢化地域における地域雇用政策の意義と課題 : 石川県珠洲市内集落における地域雇用対策事業の事例から
神崎 淳子
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2013 年 5 巻 2 号 p. 163-174

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抄録

過疎高齢化が進展し,地域経済やコミュニティ機能,生活基盤の脆弱化か見られる条件不利地域における地域雇用政策の意義と課題を明らかにすることが本稿の目的である。近年,地域雇用政策において事業創出による就業機会形成の課題に対し,地域が主体的役割を果たすことが期待されている。住民生活の維持と,地域の持続可能性の2つの視点から地域雇用政策の意義を明らかにするために,地域雇用政策事業を実施した石川県珠洲市内集落の生活実態調査をもとに本稿では分析を行った。調査事例からは,地域雇用政策による就業機会が所得の形成と多面的意義を持つ仕事の提供(農業の継続や生業維持),共同体の扶助行為の維持に利用されていることを明らかにしている。ここから,条件不利地域の課題として生活サービスの不在,地域固有の現金支出,共同体的生活基盤の弱体化の問題を指摘し,地域雇用政策が多様な地域構造に対応する点で先述の2つの視点から地域課題に取り組む可能性を持つことを指摘した。事例地域では,地域雇用政策が生活課題の顕在化やサービス実施主体の形成への展開が見られることを明らかにしている。

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© 2013 社会政策学会
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