社会政策
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日本社会政策思想史上における経済と社会(<特集>社会改革思想と現代-社会政策の思想的基盤を問う)
玉井 金五
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2015 年 6 巻 3 号 p. 46-56

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抄録

日本における社会政策学会が社会改良主義を標榜する形で発足してから,すでに1世紀以上が経過した。この間,学会における思想・学説も時代に応じた目まぐるしい変転を遂げ,今日に至っている。それでは,当初の規範理念であった社会改良主義は一体どこまで変容したといえるのか,それともその根幹部分においては依然としてその生命力を維持し続けているのであろうか。社会政策を市場社会との関係性で考えてみると,大きくは二つの役割がある。その一つは,市場機能が効果的に作用するように必要なルール化や規制(例,労働条件)を行うことである。これはいわば<経済の論理>を重視した考え方である。もう一つは,市場機能から生み出された負の側面等に対して措置(例,生活保障)する手法である。これは,むしろ<社会の論理>を前面に押し出すものといえよう。1世紀にも及ぶ日本の社会政策思想史を振り返ると,時代によっては重点の置きどころが<経済の論理>と<社会の論理>のそれぞれに分かれ,対立したケースや,その双方をバランスよく組み合わせようと努力がなされた事例が見出される。実際の社会政策を打ち出すうえにおいては,<経済の論理>と<社会の論理>,それぞれの思考の占める比重の大きさこそが,その社会政策の実質化を決定していくことになる。戦前期から現代に至るまでの時期を視野に収めながら,社会政策思想史上における経済と社会のせめぎ合いの一断面を照射することで,21世紀の社会政策思想の方向性とは何かを示唆したい。

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© 2015 社会政策学会
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